地上権(物権)と賃借権(債権) 

    東京タワー

    地上権について

    一般的な居住建物を所有する際に利用される借地権は
    賃借権が多いため、賃借権をベースにお話ししてきましたが、
    実は借地借家法で保護される借地権には地上権もあります。

    地上権は民法の規定によれば、工作物や竹木を使うために
    他の人の土地を使用する権利とされているのです。
    工作物というのは建物のほか、道路やトンネル、テレビ塔や
    地下鉄、ゴルフ場などを広く含み、
    竹木とは植林を目的とする森林等のことを指しています。

    ただし借地借家法で保護される地上権は、
    建物所有を目的とするもののみです。
    人々の生活の本拠となる建物は民法の規定を超えた
    保護が与えられているのです。

    この点、地上権は物権であり、
    賃借権は債権という権利に分類されます。
    地主が土地を所有している権利である所有権も物権に該当します。
    物権と債権は何が違うのでしょうか。

    民法の規定に基づけば、物権には物を支配する強力な権利があり、
    債権は目に見えない権利であるため、
    物権に比べると弱い権利になります。
    物権は物を直接かつ排他的に支配する権利といわれ、
    1つの物に対して同一の物件が多数成立することがなく、
    かつ誰に対してもこれは自分のものだと
    主張することが認められます。

    これに対して債権は、
    債権者と債務者の合意によって発生する権利です。
    たとえば、商品の売買契約や金銭の消費貸借契約なども
    債権契約です。

    借地権について

    借地権の場合は、地主と借地人との賃貸借契約に
    基づいて賃借権が発生します。
    この債権は、全ての人に対して主張することはできず、
    契約者間のみでしか主張できません。

    たとえば借りた土地を何者かが占拠して居座っている場合に、
    借地人は私の土地から出て行けということはできません。
    出て行けといえるのは所有権を持つ地主です。
    では、同じ土地を借りる権利でも
    地上権と賃借権ではどう違うのでしょうか。

    この点、民法の規定によれば両権利とも、それぞれ地上権の登記、
    賃借権の登記を備えることにより、対抗力を持つとされています。
    債権である賃借権であっても、登記を備えることで、
    地主以外にも広くその権利を主張できるようになるのです。

    この点、登記には共同申請が義務付けられているので、
    地主と借地人が共同で申請しなければなりません。
    地上権は物権のため何人にも主張できる強い権利なので、
    地主は共同申請に応じる義務があります。
    これに対し、債権である賃借権は弱い債権であるため、
    地主が協力を拒むことができてしまいます。
    このように債権は物権に比べて限定された弱い権利であるのが
    普通です。

    そこで登場するのが、借地借家法です。
    借地借家法は民法の規定を修正し、
    地主が応じないことにより賃借権の登記が供えられなくても、
    その土地上に所有する建物の登記をすれば、
    借地権の対抗力が認められるとしています。
    建物は自分のものですので、
    地主の協力は不要で、単独で登記が可能です。

    このように、借地権については借地借家法により強い権利が
    与えられており、地主より借地人の保護が図られています。
    これにより、建物所有目的の土地に関する限り、
    地上権(物権)と賃借権(債権)は大きな差はなくなっています。
    そして、地上権に比べて利用しやすい賃貸借契約に
    基づく賃借権による借地権が多くを占めているのです。