借地権の売買の注意点
ありがちなケース
借地人が借地上の建物を売却して借地権を第三者に譲渡する場合、
地主の承諾が必要という話が何度も登場しました。
では借地権の売買にあたって、
どのような点に注意しておけばいいでしょうか。
借地を相続した相続人などにありがちなケースですが、
借地契約のルールを熟知しておらず、自己所有建物なのだからと、
地主の承諾を得ないまま売却してしまうことがあります。
また地主の承諾を得るのが面倒だし、
売ってしまえばとやかく言わないだろうと
無断で売却してしまうようなケースもあるかもしれません。
とやかく言わない地主であればいいですが、
承諾なき売却はルール違反ですから、
借地の賃貸借契約を解除される虞があります。
そうなると、どの様になるのかと言いますと、
借地権が消滅し使えない土地の上に宙に浮いている建物が
建っているような状態になってしまいます。
これでは建物の買い手の信頼も損ね、
売買契約も白紙に戻りかねません。
もっとも、判例では地主の契約解除権は借地人に背信的行為と
認められる事情がない限り、行使が制限されるとされていますが、
地主との無用な争いは避けたいものです。
そうならないためにも、
地主の承諾をきちんと得るようにしましょう。
また、承諾を得られずに裁判所に許可を申し立てる場合は、
どうなるでしょうか。
先の例で、無断で売却をしようとして、
契約の解除には至らなかったものの、地主が立腹してしまい
承諾を拒否したなどのケースなどもあり得ます。
この点、裁判所も借地人の有利に
常に許可を与えてくれるわけではありません。
裁判所の許可が必要
裁判所は許可を与えるか判断するにあたり、
借地の使い方等に関して当事者間でトラブルがなかったかなど
従前の経過、借地権の残存期間、建物の買主で
ある新しい借地人の地代の支払い能力、
借地権の譲渡を必要とする事情など一切の事情が考慮されます。
また、許可を与えるにあたっても、当事者間の公平を図るために
必要があると判断すれば、地代の値上げや契約条件の変更、
借地人に対して地主に承諾料を支払うよう命ずることもあります。
ちなみに、承諾料は借地権価格の1割程度となることが
多いようです。
まとめ
このように地主の承諾を得られず、裁判まで発展すると、
承諾料などのコストがかかったり、借地契約の条件変更や地代の
値上げなど、新しい借地人に不利な条件となることがあります。
また、そもそも、こうした裁判に持ち込まれた時点で、
建物を買おうとした人は、そんな状態で
買いたくないと逃げてしまうかもしれません。
売りたい時にスムーズに売れるようにするためにも、
日頃から地主との関係は良好に保っておくことが肝心です。
そのためには、地代の支払いを怠らないこと、
土地の使用に関するルールはしっかり守ること、
借地の近隣住民とのトラブルを起こさず円滑な関係を築いて、
地主への評価を下げないことなどが大切です。
建物を売却したところで普通の人が土地を借りる以上、
土地の利用状況に大きな変化があるわけではありません。
すなわち、地主との信頼関係さえ築いておけば、売却の承諾が
得られないといった事態には基本的にならないはずです。