建物の滅失と契約の関係

    驚いてる男性

    権利関係のトラブル

    なんらかの事情で借地上の建物が滅失してしまった場合、どのような権利関係のトラブルが予想されるでしょうか?
    あまり考えたくはないですが、火災で焼失したり、地震で全壊したり、水害で流されて建物が滅失したという場合はどうなるのでしょうか。
    借地人としては、もう一度ここに建物を建ててやり直したいと考える場合もあれば、災難にあった場所で暮らすのはもう嫌だから、これを機会に新しい場所で出直そう、借地契約は取りやめにしたいという場合もあるでしょう。
    この場合、借地借家法の規定では、少し難しい定めになっています。
    借地契約をした最初の契約期間なのか、一度でも更新をした後の契約期間なのかで取り扱いが異なります。
    まず、最初の契約期間の途中で災害等による建物の滅失や、もしくは借地人自身が老朽化などを理由に取り壊しをした場合を考えてみましょう。
    この場合に建物の再築にあたり、地主が承諾して建物を再築した場合には、許可をもらえた日か建物が再築された日から20年または契約期間の残存期間のいずれか長い期間、もしくは当事者で改めて決めた期間のいずれか長い期間、契約を継続することができます。
    たとえば、当初30年の契約期間の途中の20年目で建物が火災で滅失し、地主の許可を得て再築したとします。
    契約期間の残存期間は10年しかありませんが、新築の建物ですから10年後もまだまだ綺麗な状態で利用できることでしょう。
    たった10年しか住めないというのでは可哀想です。
    そこで、少なくとも20年は住んでいいよというのが、借地借家法の7条1項の規定です。
    これに対して、一度でも契約を更新した後の契約期間中に建物の滅失があった場合は、少し定めが異なります。
    この場合は、借地人は借地契約の解約申し入れができると借地借家法の8条1項に定められています。

    契約更新

    また2項では、借地人が地主の承諾を得ずに、契約の残存期間を超えて存続する建物を再築した場合には、地主が借地契約の解約申入れができるとしているのです。
    そして地主が解約申し入れをしてから3ヶ月の経過で、借地権が消滅する、つまり、もう土地を借りることはできなくなると定められているのです。
    契約更新後の場合の建物の滅失と再築については、重々注意しておかないといけません。
    ただし、これらの解約申し入れの規定は、互いにしない行わないことを定めておくことができます。
    いずれか一方の解約申し入れを制限することはできませんが、両者の解約申し入れを制限する規定を予め、話し合いで入れておくというのはトラブル防止に繋がります。
    もっとも、建物再築を地主が承諾せず解約されそうな場合には借地人を救済する規定が設けられているのです。
    それが、借地借家法の18条です。
    契約更新後に指定されている期間を超えて存続する建物を再築したことについて、仕方のない事情があるにも関わらず、地主が承諾しない場合、裁判所が地主の許可と同等の権利を与えることができるとされています。
    この許可にあたっては、建物滅失に至った事情や、それまでの借地人と地主の関係、地主が土地を必要とする事情など、一切の事情が考慮されます。
    裁判所を味方につけるためにも、地代の支払いは怠らず、地主との良好な関係を築いておくことがトラブル防止のためには大切です。